三相誘導機の固定子巻線に三相交流電流を流すと、空間的に回転する磁界(回転磁界)が発生する。これは単相巻線が作る「交番磁界」(大きさが時間変化するが方向は固定の磁界)とは異なる。この回転磁界と回転子との速度差(相対速度。滑りは相対速度を同期速度で割った比)によって回転子導体に電圧が誘導され、電流が流れ、磁束との相互作用でトルクが生じる。
令和6年度 上期 第三種電気主任技術者 機械 問3
次の文章は,三相の誘導機に関する記述である。
固定子の励磁電流による同期速度の (ア) と回転子との速度の差(相対速度)によって回転子に電圧が発生し,その電圧によって回転子に電流が流れる。トルクは回転子の電流と磁束とで発生するので,トルク特性を制御するため,巻線形誘導機では回転子巻線の回路をブラシと (イ) で外部に引き出して二次抵抗値を調整する方式が用いられる。回転子の回転速度が停止(滑り s=1)から同期速度(滑り s=0)の間,すなわち,1>s>0の運転状態では,磁束を介して回転子の回転方向にトルクが発生するので誘導機は (ウ) となる。回転子の速度が同期速度より高速の場合,磁束を介して回転子の回転方向とは逆の方向にトルクが発生し,誘導機は (エ) となる。
上記の記述中の空白箇所(ア)~(エ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
選択肢
解説
結論 → 詳細 → 補足 の 3 層構成
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解説
結論 → 詳細 → 補足 の 3 層構成
詳細Layer 2展開閉じる
巻線形誘導機では、回転子三相巻線の各相端子を3個の「スリップリング」(回転する導体リング)とそれに接触する「ブラシ」を介して外部回路に引き出し、二次抵抗を挿入・調整することでトルク-速度特性を制御する(比例推移)。これに対し「整流子」は直流機や交流整流子機で電流の向きを機械的に切り替える部品であり、巻線形誘導機の二次抵抗制御には用いられない。
補足Layer 3展開閉じる
滑り s について、1>s>0(回転子速度が0から同期速度未満)の範囲では、回転子は同期速度に追随する向き(回転磁界と同方向)にトルクを受けて回転するため、誘導機は電気エネルギーを機械エネルギーに変換する「電動機」として動作する。
回転子の速度が同期速度を超える場合(s<0、いわゆる過同期運転)は、回転子が磁界より速く回転するため、誘導起電力・トルクの向きが逆転し、回転子側から機械エネルギーが入力されて電気エネルギーとして固定子側へ出力される「発電機」(誘導発電機)として動作する。
したがって、(ア)回転磁界、(イ)スリップリング、(ウ)電動機、(エ)発電機の組合せが正しく、これに合致するのは(3)である。
各選択肢の解説
- (1)
(ア)交番磁界 (イ)スリップリング (ウ)電動機 (エ)発電機
(ア)を「交番磁界」としている点が誤り。三相巻線が作る磁界は空間的に回転する「回転磁界」であり、交番磁界(単相巻線が作る、方向固定で大きさのみ変動する磁界)ではない。(イ)(ウ)(エ)は正しい組合せだが、(ア)の誤りにより不正解。
- (2)
(ア)交番磁界 (イ)整流子 (ウ)発電機 (エ)電動機
(ア)「交番磁界」が誤り(正しくは回転磁界)。(イ)「整流子」も誤り(巻線形誘導機の二次回路引き出しはスリップリングであり、整流子は直流機等で用いる部品)。さらに(ウ)(エ)が「発電機」「電動機」と逆になっており、1>s>0の通常運転は電動機動作であるため誤り。複数箇所が誤っており不正解。
- (3)
(ア)回転磁界 (イ)スリップリング (ウ)電動機 (エ)発電機
(ア)回転磁界、(イ)スリップリング、(ウ)電動機、(エ)発電機のすべてが本文の記述と整合する正しい組合せ。これが正答。
- (4)
(ア)回転磁界 (イ)スリップリング (ウ)発電機 (エ)電動機
(ア)「回転磁界」、(イ)「スリップリング」は正しいが、(ウ)(エ)が「発電機」「電動機」と逆になっている。1>s>0(同期速度未満)では誘導機は電動機として動作し、同期速度超過時に発電機として動作するため、この組合せは誤り。
- (5)
(ア)交番磁界 (イ)整流子 (ウ)電動機 (エ)発電機
(ア)「交番磁界」が誤り(正しくは回転磁界)。(イ)「整流子」も誤り(正しくはスリップリング)。(ウ)(エ)は「電動機」「発電機」で本文の動作原理とは整合するが、(ア)(イ)の誤りにより不正解。
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