問題文の近似に従い,励磁回路,一次抵抗,漏れリアクタンスを省略します。すると1相の等価回路は,相電圧 V に抵抗 r₂/s だけが接続された回路になります。ここで r₂ は二次抵抗(一次換算値),s は滑りです。r₂ は運転条件によらず一定とみなします。
令和7年度 上期 第三種電気主任技術者 機械 問4
問4 一般的な三相かご形誘導電動機がある。
出力が大きい定格運転条件では,誘導機の等価回路の電流は,「二次電流≫励磁電流」であるから,励磁回路を省略しても特性をほぼ表現できる。さらに,「二次抵抗による電圧降下≫その他の電圧降下」となるので,一次抵抗と漏れリアクタンスを省略しても,おおよその特性を検討できる。
このような電動機でトルク一定負荷の場合に,電流 80 A の定格運転から電源電圧と周波数を共に 5 % 下げて回転速度を少し下げた。このときの電動機の電流の値[A]として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
選択肢
解説
結論 → 詳細 → 補足 の 3 層構成
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解説
結論 → 詳細 → 補足 の 3 層構成
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【電流】
I = V ÷ (r₂/s) = s·V / r₂
補足Layer 3展開閉じる
【トルク】
二次入力(同期ワット):P₂ = 3·I²·(r₂/s) = 3·s·V² / r₂
同期角速度:ωₛ = 4πf / p(p:極数)なので ωₛ ∝ f
トルク:T = P₂ / ωₛ ∝ s·V² / f
【トルク一定の条件】
トルクが一定なので s·V²/f = 一定 です。
V′ = 0.95V,f′ = 0.95f を代入すると次のとおりです。
s′·(0.95V)² / (0.95f) = s·V² / f
s′ = s / 0.95
【変更後の電流】
I′ = s′·V′ / r₂ = (s/0.95)·(0.95V) / r₂ = s·V / r₂ = I
したがって I′ = I = 80 A となり,電流は変わりません。
【別の見方】
電圧と周波数を同じ比率で変えると V/f が一定になり,磁束も一定に保たれます。誘導電動機のトルクは磁束と二次電流(有効分)にほぼ比例します。そのため,磁束一定かつトルク一定なら,電流も一定になります。
【補足:回転速度】
滑り周波数 s′·f′ = (s/0.95)·(0.95f) = s·f で,変化しません。
回転速度は n′ = (1 − s′)·0.95nₛ = (0.95 − s)·nₛ です(nₛ は元の同期速度)。
元の (1 − s)·nₛ と比べて 0.05nₛ だけ低下します。これが問題文の「回転速度を少し下げた」に対応します。
以上より,最も近い値は (3) 80 A です。
各選択肢の解説
- (1)
72
誤り。72 A は 80 × 0.95² ≒ 72.2 A に相当する値です。しかし,この近似等価回路でトルク一定の条件を用いると,I′ = s′V′/r₂ = (s/0.95)(0.95V)/r₂ = sV/r₂ となり,電流は変わりません。電流が電圧の2乗に比例して減る関係は,この条件からは導かれません。
- (2)
76
誤り。76 A は 80 × 0.95 = 76 A に相当する値です。滑り s を一定のまま I = sV/r₂ に V′ = 0.95V を入れるとこの値になります。ただしその場合,トルク T ∝ sV²/f は元の 0.95²/0.95 = 0.95 倍に下がり,トルク一定の条件を満たしません。トルクを一定に保つには滑りが s/0.95 に増えるため,電流は 80 A のままです。
- (3)
80
正しい。トルク一定の条件 s·V²/f = 一定 から s′ = s/0.95 となります。I′ = s′V′/r₂ = (s/0.95)(0.95V)/r₂ = sV/r₂ = 80 A で,電流は変わりません。V/f 一定で磁束が一定に保たれ,トルクも一定なので,電流が一定になることとも整合します。
- (4)
84
誤り。84 A は 80 ÷ 0.95 ≒ 84.2 A に相当する値です。しかし,この近似等価回路でトルク一定の条件から計算すると I′ = I = 80 A です。電流が 1/0.95 倍に増える結果は得られません。
- (5)
88
誤り。88 A は 80 A の 1.1 倍です。この近似等価回路でトルク一定の条件から計算すると I′ = I = 80 A であり,電流が増加する結果は得られません。
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