本問の三つの回路では,入力の数 0,1,2 がそれぞれ次のマルチバイブレータに対応する。
・入力 0:無安定(非安定)マルチバイブレータ
・入力 1:単安定マルチバイブレータ
・入力 2:双安定マルチバイブレータ
なお,二つの入力を短絡した NAND は Y = ¬(A·A) = ¬A となるので,NOT として働く。
問18 NAND IC を用いたパルス回路について,次の(a)及び(b)の問に答えよ。ただし,高電位を「1」,低電位を「0」と表すことにする。
(b) 図3の三つの回路はいずれもマルチバイブレータの一種であり,これらの回路図において NAND IC の電源及び接地端子は省略している。同図(ニ),(ホ),(ヘ)の入力の数がそれぞれ 0,1,2 であることに注意して,これら三つの回路と次の二つの性質を正しく対応づけたものの組合せとして,正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
性質Ⅰ:出力端子からパルスが連続的に発生し,ディジタル回路の中で発振器として用いることができる。
性質Ⅱ:「0」や「1」を記憶する機能をもち,フリップフロップの構成にも用いられる。


結論 → 詳細 → 補足 の 3 層構成
本問の三つの回路では,入力の数 0,1,2 がそれぞれ次のマルチバイブレータに対応する。
・入力 0:無安定(非安定)マルチバイブレータ
・入力 1:単安定マルチバイブレータ
・入力 2:双安定マルチバイブレータ
なお,二つの入力を短絡した NAND は Y = ¬(A·A) = ¬A となるので,NOT として働く。
(ニ) 入力 0:
2 個の NAND はいずれも入力を短絡しているので,NOT として働く。左を NOT1,右を NOT2 とする。NOT1 の出力はコンデンサを介して NOT2 の入力へつながる。NOT2 の出力は上部配線を通って NOT1 の入力へ直接戻る。さらに,抵抗が NOT2 の出力と入力の間に接続されている。
NOT2 の出力が「1」のとき,抵抗を通してコンデンサが充電され,NOT2 の入力は徐々に上昇する。入力がしきい値を超えると,NOT2 の出力が「0」に反転する。すると NOT1 の出力が「1」に変わり,その変化がコンデンサを通じて NOT2 の入力を押し上げるので,反転が一気に確定する。次は抵抗を通じて NOT2 の入力が徐々に低下し,しきい値を下回ると再び反転する。
この回路には安定状態がない。そのため外部入力なしに反転を繰り返し,出力端子からパルスが連続的に発生する。よって無安定マルチバイブレータであり,性質Ⅰに当たる。
(ホ) 入力 1:
右の NAND は入力を短絡しているので,NOT(NOT2)として働く。NOT2 の入力は抵抗で接地側に引かれている。そのため通常は,NOT2 の出力が「1」となる状態で安定している。
この安定状態では左の NAND の一方の入力が「1」なので,左の NAND の出力は ¬(外部入力) になる。外部入力を「1」に保って待機すると,左の NAND の出力は「0」である。
ここで外部入力を「1」から「0」に下げる(立下りのトリガ)と,左の NAND の出力が「0」から「1」に変わる。この変化がコンデンサを通じて NOT2 の入力を「1」にし,NOT2 の出力は「0」になる。この「0」が左の NAND に戻るので,外部入力が「1」に戻っても左の NAND の出力は「1」に保持される。
しかしコンデンサが抵抗を通じて充電されるにつれて,NOT2 の入力は低下していく。時定数(抵抗×静電容量)で決まる時間の後,入力がしきい値を下回り,元の安定状態へ戻る。
つまりトリガ 1 回につきパルスを 1 個出す単安定マルチバイブレータであり,連続発振も状態の保持もしない。
(ヘ) 入力 2:
2 個の NAND が,互いの出力をもう一方の入力に接続したたすき掛け(交差結合)構成で,外部入力を 2 個もつ。これは NAND 形 RS ラッチ(双安定マルチバイブレータ)である。二つの安定状態のどちらかを入力が変わるまで保持するので,「0」や「1」を記憶できる。フリップフロップの基本構成となるので,性質Ⅱに当たる。
よって性質Ⅰは (ニ),性質Ⅱは (ヘ) で,正答は (2)。
性質Ⅰ:(ニ) 性質Ⅱ:(ホ)
誤り。性質Ⅰ=(ニ) は正しい。しかし (ホ) は単安定マルチバイブレータで,トリガ後,RC 時定数で決まる時間が経つと元の安定状態に戻る。そのため「0」や「1」を記憶する機能(性質Ⅱ)はもたない。
性質Ⅰ:(ニ) 性質Ⅱ:(ヘ)
正しい。(ニ) は入力 0 の無安定マルチバイブレータで,外部入力なしに連続してパルスを発生する(性質Ⅰ)。(ヘ) は NAND 2 個を交差結合した双安定マルチバイブレータ(RS ラッチ)で,状態を保持する(性質Ⅱ)。
性質Ⅰ:(ホ) 性質Ⅱ:(ニ)
誤り。(ホ) は入力 1 の単安定マルチバイブレータで,トリガ 1 回につき 1 個のパルスを出すだけである。連続発振しないので性質Ⅰに当たらない。また (ニ) は安定状態をもたずに反転を繰り返すので,状態を記憶する性質Ⅱに当たらない。
性質Ⅰ:(ホ) 性質Ⅱ:(ヘ)
誤り。性質Ⅱ=(ヘ) は正しい。しかし (ホ) は単安定マルチバイブレータで,連続的にパルスを発生しないので性質Ⅰに当たらない。性質Ⅰに当たるのは (ニ) である。
性質Ⅰ:(ヘ) 性質Ⅱ:(ホ)
誤り。(ヘ) は双安定マルチバイブレータで,入力が変わらない限り状態を保持し,自ら発振しない。そのため性質Ⅰに当たらない。また (ホ) は一定時間後に元の状態へ戻るので,性質Ⅱに当たらない。
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